ドライブのこと


ドライブという歌のことが何で好きなんだろう。いつでも、彼女が運転する車の助手席に乗っていて、自信をもてないようなとても情けない男の歌だ。でも、一緒にいることがあたりまえになっているような信頼関係が見え隠れしているように感じるそんな歌だ。女の人から見ていつでも助手席に乗っているような男ってどうなんだろう?女の人はこの歌を聴いてどう思うんだろう?僕も車を持っていないんだよなぁ。
もうずっと前のこと、僕らはレンタカーでドライブ旅行をしていた。僕らはただの友達だった。でも僕はその友達のことがとても好きだった。僕はその友達に彼がいたことを知っていたから、告白なんかできなかった。でもドライブの初日にその友達はポストに手紙を投函して、「別れようって手紙を出してきちゃった。」と言った。だから、僕は少し動揺したんだ。その車を借りたのはその友達で、僕の慣れていないマニュアル車だったうえに走行する道路は慣れない外国だった。僕は運転に自信が持てなくてずっとその友達に運転を任せてしまった。旅行も二日目も過ぎるとその友達はさすがに疲れたようでイライラしてきていた。運転変わってくれないのって突っ掛かってきて、でも僕はマニュアル車を本当に長い間運転していなかったから練習しないと危ないから無理だって答えて、ますますイライラさせてしまった。僕は情けなかった。申し訳なくて、でも声を出すのも気まずい雰囲気になっちゃって、ごめんねって声に出して言えなくて、何度も心の中で思っていたんだ。僕は次の日の朝、ひとりでとても早く起きて運転の練習をしたんだ。何とかギアチェンジの感覚も思い出してでも街中ではちょっと不安だけれど、一本道が続くようなところなら運転は大丈夫だから、その日は半分ぐらい運転をしてあげることができてちょっとホっとしたよ。でも、おっかない運転だってすごく冷やかされたんだ。そういえば、車にはCDプレイヤーなんて洒落たものは付いていなくて、CDウォークマンにポータブルスピーカーをつないでダッシュボードにおいて音楽を聴いていた。知ったばかりだっていうKNOCKIN' ON HEAVEN'S DOORを聴きたくてその友達が買ったっていうBob DylanのベストCDを何度も聴いたんだ。僕は助手席でさ大好きなLIKE A ROLLING STONEばっかり頭出しして何度も繰り返して、またその曲ばっか、なんて呆れられてしまったっけ。そうさ、僕はふられちゃったよ。

「ドライブ」 Music&Lyrics 田辺マモル
ちょっと太ったからと言って/真っ正面から顔を僕に見せてくれない/君は今輝いてるのに/ちょっと変になっちゃったと言って/切ったばかりの前髪指で丸め/君は今輝いてるのに
君を不幸にしてはいないよね/このまま一緒に居てもいいんだよね/ごめんねなんて謝るのは変だけど/ごめんね、ごめんね、何度もごめんね
似合うか分からないけれど/そう言いながら君はシャツをくれた/君のなら何でも似合うのに/いつも車に僕を乗せてくれる/君の隣ではしゃいでみせるのさ/もったいなくてまっすぐ君に向かえない/ごめんね、ごめんね、何度もごめんね
君を不幸にしてはいないよね/このまま一緒に居てもいいんだよね/ごめんねなんて謝るのは変だけど/ごめんね、ごめんね、何度もごめんね