言葉にしない気持ち

peanut_butter2009-11-07

小春日和だったね。思ったよりも打ち合わせが長引いちゃったので、どうしようかなと思ったけれど、いつもいる場所よりずっと近くだから、新快速の電車に飛び乗った。もうすっかり暗くなっちゃっていたけれど、この電車に乗れたから、まだ、間に合うって思った。降りた駅は古い伝統的なイメージの場所だけれど、駅自体は少し場違いな近代的な大きな建物で、ガラスの吹き抜けには大きなクリスマスツリーがあって、駅の外のロータリーの木にもキラキラと電飾されていて気の早いクリスマス気分な雰囲気を横目に眺めつつ歩く。数えるほどしか行ったことがない場所だけれど、いつものように、いや、数えるほどしか行ってないのに、いつものようになんて表現もおかしいなって思うけれど、どういう言葉で表現したらいいのか分からない心地よい気持ちになれる場所が待ち受けていてくれるのだろうかなんて小ちゃな不安や大きな期待で急ぎ足になっていた。少し狭くて急な階段を上って木の扉を開けると、いつもの顔が、やっぱり数えるほどしか来ていないから、いつもの顔がなんていうのもおかしいんだけれど、ちゃんといつもの顔が、笑顔になってそこにあったから、それだけでよかった。だから、来てみてよかった。チャイとチーズケーキをいただいていると、扉が開いて、いつもの顔が、あ、違うね、ここでは僕には初めての顔だったよ、だけどいつもの顔が現れたから、やっぱりよかった。短い時間で、そんなにたくさん話しをしたわけじゃなくて、小さな音でラジカセから流れる形になりつつある新しい歌とはじけるように溢れ出す楽しそうな会話に耳を傾けていたばかりだったけれど、全部の気持ちを言葉にしなくたっていいんだって、そんな必要なんてないんだって、なんとなくそう思った。そして、この場所があるうちに、またいつもの顔に会いに行かなくちゃって、勝手に思った。たぶん、また来月に、まだ、ちゃんとそこにあるうちに。あ、誕生日おめでとうございます。また、駅まで早足に歩いた道で見上げた空は少し曇りかけてきていて月は少し前に見た満月より欠けていて三日月の反対みたいな月だった。自分の住む場所に着いたのはもう日付けが変わっていた時間だったけれど、空を見上げると同じ形の月があって、ホッとした。