行ったり来たり

80円で買った古本の文庫本「岸辺のない海」をようやく読み終えた。金井美恵子さんの文章は、なかなか区切りを見つけるのが難しいのだ。だから、通勤電車の中で本を開いていると降りる駅でうまくどこまでというふうに踏ん切りがつかなくて、また通勤電車で1ページや2ページ戻って読み返すなんてことを繰り返していた。そして書いてあったことなんてどんなことだったかなんてすぐ忘れちゃうのだけど、体のどこかに引っ掻き傷みたいな物が残ってしまう。自分の中の明るいところから暗いところまで正面から目を背けずに向き合っているようだった。
僕は別の場所で別の歌を泣きそうになりながら聴いていたのはそれでよかったのだけれど、この歌とかこの想いにも触れてみたかったなってすごく思う。