豚と梨

ここのところ仕事に託つけて、毎月1度実家に帰っている。いつも父親が夜に駅まで迎えにきてくれて次の日の朝にまた駅に送ってくれる。お互い調子にのらないとあまりしゃべらない質だし、何を話したらいいのかなあなんて思いながらだまっていたりする。それでも少しぼそぼそと話したりする。おじいちゃん、おばあちゃんが死んでからもうだいぶ経つけれど、農業をしていたから家と農地が残っている。その場所はとても好きで小さい頃は長いお休みにそこで過ごすことにわくわくしていた。その場所には親はもうずっと住んでいないけれど所有している。でももう手放そうと役場にお願いして都会から移り住んで暮らしたいような人がいたら譲れたらと公表してもらうようにしたらしい。その話を送ってくれた車の中で聞いた。もう何年か前に都会働くことの忙しさや大きなお金が動くことの訳の分からなさが嫌になった時にもう仕事やめてあそこに一人で住みたいと父親にお願いしたことがあったけれど、ちょうどそのときに破産したおじさんを住まわせるように話をつけたところだと言われてあきらめたことがあった。出張先に向かう電車の中で緑あふれる山々の景色を眺めながら、だからなんだか複雑な気持ちになった。今もまだ、逃げ出したいなあって同じような気持ちに捕われているんだろう。