愛すべきフォーク・ソング

もう一週間経ってしまったけれど、先週の土曜日、宇都宮まで行ってきたんだ。宇都宮の駅に着くとまず、駅近くのビルの地下にある「みんみん」でヤキスイライス(焼き餃子、水餃子それぞれ1人前とライス一杯のセットだ。)と地ビール ろまんちっく村というのをいただいた。宇都宮は餃子の街だからね。宇都宮の駅からまっすぐ伸びる大通りはたくさんの人たちが溢れていた。夏祭りの真っ最中だったのだ。行き交う浴衣姿の人々、祭り囃子を奏でる小さな子供たち、おみこしを担ぐ人たち、はっぴ姿の女の子がおみこしの上に乗っかって行列を煽っていた。とても活気のある街を興味深く眺めつつ、少し楽しい気分になって早足ですり抜ける。そんなお祭り騒ぎの街の中、僕は小さな雑居ビルの3階にある宮フォーク村という名前の小さなフォーク・ソングのライブスペースに足を踏み入れた。そう、宇都宮に来た目的はお祭りを見に来たのじゃなくて、歌を聴きに来たのです。

田辺マモルさんの歌を聴きたかったんだ。椅子に腰掛けてちょっとしたら、田辺さんがステージに現れたんだ。そして、ギターをかかえハーモニカをホルダーにセットし、ハーモニカを吹き出した。ちょっとどきっとしたんだ。大好きな歌「言われる前に言ってやる」だったから。

積極的にアクションを起こすより
嫌々することが多い
だからうまくいったときも
安堵はしても歓喜はない
情熱的な人をうらやむが
そうなりたいってわけじゃない
俺を駆り立てているのは
楽しんで生きたい気持ち
そのための苦労ならいとわない
やりたくないことしたくない
言われる前に言ってやる
「やめたほうがいい」
うるせえ ようやく楽しくなってきたとこなんだ
人それぞれの顔が違うようにきっと
才能のあり方も違うのさ
俺には俺のやり方があると思うから
明けても暮れてもさがすのさ
負けるもんか やめるもんか
負けるもんか やめるもんか

この歌がなんで好きなのか、「前向き」なのか「後ろ向き」なのかつかみどころのない感じが好きなのだ。僕の中にある何か燻っているもの、それはこんな感じだったりするのです。ただ甘えてるんじゃないって言われそうな雰囲気もあるけれど、うまくいえないけど、自分の気分にぴったりくるというか、巷に溢れるどんなメッセージソングよりも僕はこの歌に勇気付けられそうになるんだ。この歌の最後のフレーズなんて、「何年も生きてるのに 自分のことがまるで分からない」なんて言うんだ。生きていくにはこんなふうに迷いは付き物なのです。
ねえ、そうじゃない、違うかなぁ?

いったんステージを降りオープニングアクトに引き継いで、その後再び現れた田辺さんは、一度だけ付き合っている人にプレゼントした歌だと言って「ラブストーリー」を歌いだした。
ラブストーリーをあなたはくれた
ラブソングをあなたにあげる
間奏の時に「あんなMCするんじゃなかったな。」とつぶやく田辺さん。初めて会うのに僕はそれがとても田辺さんらしいなって思ったんだ。僕もギターが弾けてメロディを奏でて好きな人に歌をプレゼントできたらいいのになって思ったんだ。それは、恥ずかしいことなのかもしれないけれど、そういう恥ずかしいことをいっぱいできたら素敵じゃないかって思うんだ。僕は自分が好きな歌を集めて好きな女の子にプレゼントしたときに他の選曲は全部日本語の歌じゃないものにしたのに、この「ラブストーリー」という日本語の歌を一番最後に入れておいたことがあるんだ。ふられちゃったけれどね。
「こんなに惹きつけられてしまうのは あなたと歌とチョコだけです」という歌詞はこの日は「こんなに惹きつけられてしまうのは あなたと歌とスイカだけです」ってなっていました。
詳しくは書きませんが、MCで語られるエピソードがどれも楽しかったです。耳慣れた歌とギターを初めて生で聴いて、ますます、僕の中で田辺さんのことを信頼できるシンガー・ソングライターだって思えたんだ。
アルバム「愛と知」のジャケットにサインしていただきました。

愛と知

愛と知

オープニングアクトは田所せいじさんでした。
初めて存在を知った酔っ払いシンガーソングライター、初めてその歌を聴いたけれど、凄く良いと思いました。
それでアルバムを手に入れました。

田所せいじ / 7月のわんちゃん

ボクは「片想い」ってのが大好きだ。そのせいか、たいていの恋は実らず終わる恋ばかり。あげくのはてには「身勝手ね」っていわれる始末だ。

そんなコメントがまたいいなあ。

あの日、フォーク・ソングを聴きに行って本当によかったなあ。

7月のワンちゃん

7月のワンちゃん