魔法を信じるかい?

村上春樹訳による「ペット・サウンズ」という本を夢中になって一気に読んでしまった。ポップミュージックにヤラレちゃっている人ならばペット・サウンズと言ったらすぐピンとくるはずだ。そう、ビーチ・ボーイズのアルバムのことだ。たった一枚のポップレコードについてだけでこんなにも興味深い本が書き上げられていることに感心してしまったし、僕が生まれる前に存在していたこのレコードをあらためて聴き直してみたのだけど感動的で素敵な音楽でやっぱり大好きだ。
「ときどき僕は思うのだが、今日という日を恐れる人々が必要としているのは、ただ『ペット・サウンズ』であるまいか。」とか大げさとも捉えられる本の中の表現も僕にとってもそれに値すると納得できるくらいに思える価値のあるレコードだ。「魔法を信じるかい?」はラヴィン・スプーンフルがポップミュージッックがもたらす魔法のような瞬間について歌ったうただったと思うけれど、人によってポップミュージックはうまく行かない人生を救うくらい重要なものにだってなりうるんだと思うし、僕はずっと魔法を信じていたいんだ。

ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

ペット・サウンズ

ペット・サウンズ

なんて、そんなふうに勢いで書いてしまったが、もし僕がもっと早くに生まれていて高校生ぐらいにリアルタイムでこの「ペット・サウンズ」を聴いていたとしてこの本の著者ジム・フジーリと同じような想いであったか自信を持って言い切ることはできない。僕はたくさんポップミュージックを聴きすぎてしまっているし、そういういろいろな影響から「ペット・サウンズ」を聴くきっかけができて、初めて耳にしたときにその音楽が古くさいものではなくとても新鮮に聴こえてすごく気に入っていたというのは本当のことだけど。たぶんフリッパーズ・ギターのドルフィン・ソングという曲が「ペット・サウンズ」に収録されているとても印象的なgod only knowsという曲をサンプリングしていたことでその存在を知って、僕は「ペット・サウンズ」を初めて聴いたのだと思う。
ヘッド博士の世界塔

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